Be ready for the rebel
ぽい、と投げ出されるようにしてマキシマ達が転移した先は、爆風に巻き込まれて崩落した建物の瓦礫の上だった。落ちた拍子に巻き起こった煙のせいでげほげほと三人で噎せ、暫くしてマキシマが涙目になりつつもラグナ達の安否を気遣った。
「げほっ、うえっ……喉がイガイガする……そっちは大丈夫?」
「はっ、はい……」
瓦礫の上でへたり込むノエルに手を差し出してやると彼女はしっかと握ってきて、マキシマはそのまま引っ張って立たせてやる。
さっとノエルを頭の天辺からつま先まで見やる。特に大きな怪我はしてなさそうだった。
「ん、怪我は……無いっぽいね」
「あの、ほんと、お二人には助けて頂いて……」
ラグナは気まずそうに眉根を寄せ、マキシマは苦笑する。
「さっきも言ったろ、俺も助けて貰ったって。それでチャラって事で良いだろ。貸しだの借りだの、作りたくねぇんだよ」
「まあ私も……同意見かな」
「じゃ、じゃあ! お名前だけでも!」
せめて何か恩返しが出来れば、とノエルは考えての事だろう。しかしマキシマもラグナも返答に戸惑い、顔を見合わせる。
曲がりなりにも相手は統制機構の衛士だ。そんな彼女に名乗っても大丈夫なのだろうか。「どうする? 良いの?」とアイコンタクトを送れば「ま、良いんじゃねぇか?」とのアイコンタクトが返ってくる。いやいや待てとマキシマが止めようとしたが、少し遅かった。
「あー……ラグナ=ザ=ブラッドエッジだ」
ピタリ、とまるでカメラで収めた写真のようにノエルの動きが止まる。
「ラグナ……ザ……? ブラッドエッジ……?」
疑問符の込められた単語は数度繰り返す内に確信へと変わっていき。
「あ、ああああ貴方が、貴方があのラグナ=ザ=ブラッドエッジですか⁉ 凶悪犯の、指名手配犯の! 『死神』ブラッドエッジ!」
「……まあ、そうですけど、なにか」
「じゃあ!!」
バッと勢い良くノエルはマキシマを見やる。
「貴方は『死神』の相棒の『首狩り』なんですか!?」
「そうなる……ね?」
マキシマはともかく、ラグナは見た目の特徴が激しいのに今の今まで気付かなかったとは。この子はどれだけ鈍いんだとマキシマが思っていると、わたわたと慌てながらノエルがホルスターから銃を抜いてラグナとマキシマに銃口を向ける。
「お、大人しくしてください! 逃げも隠れもしなければ弁護士を呼ぶ黙秘権が認められて逮捕します!」
「言ってる事が滅茶苦茶だよあんた……」
その銃口から逃れるように半歩下がりながら言う。そしてマキシマはノエルと自分を交互に指差す。
「ってか、私達もあんたもこんなにボロボロなのにまだやらかそうっての?」
「う、それは……」
銃口を下ろし、しょげる。お世辞にも身体能力の高いと言えない彼女から逃げるとなれば、幾ら手負いのマキシマ達と言えど追跡を撒く事は可能だろう。
しかし銃を下ろした事を見ると、どうやらノエルにもう戦闘意思は無いように思えた。
「……じゃあ、私はもう行くけど。願わくば次会った時もこう友好的で居たいところだね、ノエル」
ヒラヒラと手を振るとマキシマは下層に通じる道を歩いていく。
「あれっ? ラグナ……さんと一緒に行動するんじゃないんですか?」
「はぁ?」
嫌そうに肩ごしに振り向けばノエルがビクッと萎縮してしまい、彼女を威嚇するつもりは無かったが結果的にそうなってしまった。バツが悪そうにマキシマは眉を下げる。
「あー……確かにラグナとは一緒に行動してるけど、情報集めたりする必要もあるから常時一緒って訳ではないのよ。カグツチに来てからも別々のルートで支部まで来たし」
「あ、そうなんですか……」
「そう。……じゃあラグナ、何かあったらあそこの飯店で」
「おう」
念の為言葉を濁しつつ、『今後の指針と行動が決まったらオリエントタウンにある、カグツチ初日にラグナがカカ族の娘に集られた飯店に集合』と約束し、今度こそマキシマは二人に背を向けて降りていった。
殆ど睡眠を取らず徹夜に近い状態の上、足だって負傷している。襲ってくる睡魔に抗いつつフラフラと下層に向かっていると、にわかに活気に満ちた喧騒が聞こえてきた。何故だ、と上手く回らない頭でそれなりに考えてみる。
「あー……新年祭だっけか?」
昨日、立ち寄った飯店で他の客がそんな事を話していたような気がした。
今ならばこの喧騒に紛れて宿に泊まれるのでは。そんな考えが思い浮かんだ瞬間、フラフラとしたマキシマの足取りが若干軽くなる。
「しっかし……年、明けちゃったなぁ」
段々と登ってくる朝日に目を細めながら、小さくぼやいてマキシマは歩いて行く。
その声は疲れがにじみ出ていたが、それと同時に何処か嬉しそうで。