おいわい

 私が初めて家でケーキを食べたのは十四の時だった。
 誕生日を祝うことも、ご褒美の習慣もない家だったから、初めて食卓に並んだケーキはどんなに経っても覚えている。今思えば安くて小さなショートケーキだったかも知れないけど、その時の私にとっては一等豪華に見えた。けど。

「すごいじゃない灯架! これで貴方もフェストゥムと戦えるのね!」

「沢山フェストゥムを殺すんだぞ!」

 『赤紙』が来たと喜ぶ両親と、このために育てたんだと息巻く様子。熱狂する家の中で私だけが隔離されているかのような感覚。
 ケーキを口に運ぶ。初めて食べたケーキは、土のような味がしていた。


◆◆◆

 その時のことをぼんやりと思い出しながら、私は目の前に置かれたケーキに視線を落とす。
 今日は私の誕生日。私のためにと総士が一騎に頼んで作ってもらったもの。右隣と、カウンターを挟んだ正面から様子を伺うような視線が刺さって、ちょっとだけ痛い。

「お前の好きなケーキが分からなかったから、何種類か作ってみたんだけど」

 一騎が頬を掻く。一騎の言葉通り、私の前に置かれたお皿にはいくつかのケーキが乗せられている。ショートケーキ、チョコケーキ、いちごのタルト、モンブラン、他にも色々と。
 食べても良い? と視線で総士に聞いたら頷いてくれて。最初に食べたケーキと同じ、ショートケーキの一角をフォークで崩して、口に運ぶ。

「……どうだ?」

「……甘い」

 二人が顔を見合わせる気配がする。「砂糖を入れすぎたんじゃないか」「お前の指示通りの量入れたよ」なんて声がして。なんか勘違いをさせちゃったみたいだ。慌てて顔を上げて私は喋ろうとする。

「あっ、えっとね、そうじゃなくて……美味しくて、甘くて……ふわふわしててね。一騎と総士が私のために作ってくれたんだって思ったら、凄い嬉しくてね」

 言葉を選びながら、胸からなにかこみ上げてくるものがあるのを感じる。ああ、きっとこれが『幸せ』ってことなんだろうなあ。

「ありがと。一騎、総士。私、生まれてきて良かったって初めて思えたかも」

 今の私は世界で一番幸せな笑顔をしていただろう。