聖王代理と支援会話してみた-C
「いたた…さっきの戦闘で結構深く斬られたかな……」
ヒンメルは自分の天幕に入るなり外套と上衣を脱ぎ捨て、簡易の棚から薬草をすり潰して作った膏薬を取り出す。効果はソールお墨付きだ。これを塗って、後で誰かシスターの人に治療を頼めば完璧だろうとヒンメルが考えながら患部に塗ろうと瓶に指を入れた時、天幕の向こうから自分の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「おい、ヒンメル。さっきの戦闘の事なんだが……」
「クロム!? や、今は――」
入られたら困るんだけど、と言う前に入口のカーテンが開かれる。少し険しい顔をしてカーテンを開いたクロムは、中で上半身裸の状態で自分に背を向けて立っていたヒンメルを見て呆然とする。普通なら見られた側のヒンメルが悲鳴なりなんなり上げるのだろうがクロムの方が状況に耐えれなくなったのか、一気に赤面してカーテンを閉じた。
「す、すすすすまん! ま、まさか着替えてるとは思わなくてだな!!」
「いや、特に気にはしないけど……」
前は見えてないだろうし、一応とは言え幼馴染で昔から一緒なのだ。背中を見られた程度で今更目くじらを立てて怒るような事ではない。
ヒンメルは前を脱ぎ捨てた服で隠しながら外で立ち尽くしているだろうクロムに向かって声を掛けた。
「ちょっとクロム、前隠したから中入ってこれ塗って欲しいんだけど。背中じゃ手が届かないから」
「む……?」
そろりと天幕の中を覗き込み、入っても良さそうだと判断したクロムは投げ渡された膏薬の瓶をキャッチして背中を見せてるヒンメルを一瞥した。本当にやって良いのかと問いたげに。
「早く。傷痛いから」
「あ、あぁ」
緑色のどろりとした液体の入ってる瓶に指を入れて掬い上げる。薬らしく鼻にツンとする匂いだが今は気にしていられない。膏薬の乗った指をヒンメルの背中の患部に押し当てた。びくり、と跳ね上がる肩。
「いっ、た……!」
「我慢しろ。単機で敵陣に突っ込んで撹乱するなんて馬鹿げた事をするからだ」
傷に染みるのだろう。痛みに耐えるように身を固くするヒンメルだがクロムは容赦無く膏薬を塗りたくっていく。
「いや……ああしないとペガサスナイトとかアーチャーにクロムが狙われて大変だと思ったからで、あいだだだ!!」
「全く、あまり心配事を増やしてくれるな。ルフレも心配していた、後で謝っておけよ?」
「うぅ……はい…」
最後に包帯を巻くのを手伝ってやりながらクロムが言う。
「だが……身を挺して俺を守ってくれた事には感謝する。有難う」
まさかお叱りの後に礼を述べられるとは考えてもみなかったのか、ヒンメルは上衣を羽織りながら振り向くとぱちぱちと瞬き、やがてにこりと破顔した。
「当たり前でしょ、私はイーリス王家を守るイーリス国兵士なんだから」