雪降るフェリアで
はあーっと吐き出した息は白く、時折吹き付ける風は肌を刺すように寒い。イーリスに比べ、このフェリアの気候は厳しいなとクロムは城の大きなベランダで降ってくる雪を眺めながら考える。
「クロム! こんなところに居た」
「……ヒンメルか」
城内の方から怒りを滲ませた声が飛んできたかと思い振り向けば、小走りにこちらへやって来るヒンメルの姿が見えた。ヒンメルはクロムの前までやって来ると唇を尖らせる。
「ルフレが明日の行軍の事で最終確認がしたいのにクロムが居ない、って探し回ってたよ。長時間どっかに行く時は誰かに一言言ってよね……って」
何かに気づいたようにクロムの肩に触れたヒンメルは眉を吊り上げ、怒声を上げる。
「ちょっと、凄い冷えてるじゃない! どれだけ此処に居たの!」
「それほど長い時間じゃないが……フェリアの気候を甘く見ていたな」
「馬鹿」
呆れたように呟くとヒンメルは腕に掛けていたモノをバサっと広げてクロムの背中に掛けた。ローブか、と掛けられたソレの前を留めながら思う。マフラーもどうかとヒンメルが問うてきたが、これだけで十分だと首を横に振った。
「もしかして門の方に行ったんじゃないかと思って、羽織れるもの持ってきてて良かったよ」
そう言ってヒンメルはクロムの横に並んで立つと空を見上げた。どんよりと重く伸し掛る分厚い雲が空に広がっていて青空は拝めないが、代わりに雪がシンシンと降ってくる。イーリスの穏やかな気候ではまず見ることは出来ないので、寒いが見る価値は十分あるだろう。
腕を前に出して手の平に降ってきた雪を楽しんでいるヒンメルを眺めながらクロムはぽそっと呟く。
「……綺麗だな」
「ん? ああ、一面銀世界で綺麗だよね」
「…………ああ、そうだな……」
自分が言ったのはそう言う意味ではないのだが、と言ったところでヒンメルは他に意味があるのかと逆に聞いてくるだろう。どうもこの幼馴染は一言頼み事をすれば先を読んで色々と動いてくれるのに、こう言った場面ではてんで疎くなる。それとも自分の言い方が悪いのだろうか。色々考え、クロムは諦めたように曖昧に頷く。
「……やっぱ、この景色を守りたいよね。景色だけじゃない、フェリアも、イーリスも」
寒風に手を晒してたせいで冷えてしまったのだろう、両手をこすり合わせながら囁くようにヒンメルが言う。
「……だから、頑張らなきゃね」
ニコッと笑顔を向けられて締め括られた言葉にクロムも笑顔で返した。
「ああ、そうだ。俺達は守らなきゃいけない。この世界を」
「なら、早くルフレのところに戻らないとだね?」
打って変わって今度は悪戯っぽく笑ってヒンメルはクロムの手を取ると城の中に入る為引っ張っていった。