雪降るフェリアで
「わー凄いよ! 見てみてアズール!」
「クロエ、そんなにはしゃいだら……」
「きゃっ!?」
新雪の積もった、フェリア兵士達が修練する為の大きく開けた場所をクロエは文字通り跳ねるように駆けていると、突然フッとクロエの姿が消えた。クロエの後を追っていたアズールは慌てて駆け寄っていく。
クロエが消えた地点まで行けば、どうやらそこは地面が抉れてちょっとした落とし穴となっていた場所らしい。そこに雪が積もって穴が隠れてしまい、気付かなかったクロエが踏んで転んでしまったのだろう。
「だ、大丈夫かい…?」
「うぅ~……冷たいよぉ……」
雪が服の中に入り込み、その冷たさに眉を下げて弱音を吐きながらクロエはヨロヨロと立ち上がる。それに手を貸そうとアズールが手を差し出した所で、クロエの目がキラリと輝いたような気がした。
「隙有りっ!!」
「うわあっ!?」
アズールに引き起こされて中腰になった時、クロエはアズールの腰辺りにタックルしてアズールを雪の中に押し倒した。クロエは馬乗りになって楽しげに笑う。
「やったな~~……それっ!」
「そうはいかないんだから!」
逆に押し倒してしまおうとアズールが力を加えたところでクロエは素早くアズールの上から退いて距離を取る。そして雪を掬って玉を作るとアズールに投げつけた。アズールも負けじと雪玉を握って投げつける。
最初こそ只の投げ合いだったが次第に力が入っていったのだろう。次第にヒートアップしていき、一進一退の攻防戦が繰り広げられていく。
「早く倒れてよアズール! うりゃあ!!」
「おっと! いい? クロエ。男には負けられない戦いがあるんだ……よっ!」
雪合戦は互いの体力が無くなるまで続けられたとか。
◆◆◆
「……全く、お前たちは何をしているんだ……」
「その……雪合戦を」
「白熱しちゃって……」
クロムの前で首を竦めてる二人は同時にくしゃみをした。
最初こそ白熱してたせいで体は暖かかったが、当たった雪玉の冷たさや気候のせいで終わりの頃にはすっかり体は冷え切ってしまっていた。寒気がするので、もしかしたら風邪を引いたかもしれない。しっかり体を温めて寝るようにとクロムに言い渡され、漸く解放された。
「いやー、楽しかった楽しかった!」
「ほんと、楽しそうだったねクロエは」
クロムに解放されて天幕を後にした瞬間、全く懲りた様子のないクロエを見てアズールは苦笑した。二人で並んで歩きながら会話を交わす。
「今度は皆でやりたいよね。男子対女子とかで」
「ええっ? それじゃ僕たち不利じゃない? 負けるって……」
勝負ごとと聞いて熱くなりそうなシンシア、負けたくない一心で本気になりそうなセレナとデジェル、豹変したら恐ろしいノワール、竜化を持つンン。女子陣の勝利は目に見えているようなものではないだろうか。
弱気なアズールの発言にクロエはカラカラと笑う。
「そんな気持ちじゃ本当に負けちゃうよ? ……そうだ、負けたら罰ゲームとかにしたらやる気出る?」
「ああ、成程……僕らが勝ったら一緒にデート出来るとか? だったら僕、凄いやる気出るんだけどなー」
「あははっ! まあ勝ったらの話だけどね……あ」
歩きながら喋っていたせいか天幕はもう直ぐそこだ。じゃあね、と言って二人はそれぞれの天幕目指して別れる。
「ふー……それにしても、ほんとフェリアは寒いなぁ……」
自分の天幕に入る直前、クロエはどんよりと垂れ込めた空を見上げ、この寒さを恨むと言うよりは寒さを楽しめる程、今の自分には余裕があるのだなと言うように呟いて白く細い息を吐いた。
2013/03/19