聖王代理誕

「クロムー、いるー?」

 クロムの自室をノックしてみたものの返事はやってこない。留守か、はたまた寝ているのか。どちらにせよ話しておかねばならない事案があるのでヒンメルは「入るよ」と念の為一言言ってから扉を開けた。

「……ああ、やっぱり寝て」

 パチパチと爆ぜる暖炉の前に置かれた机と椅子。その椅子に深く腰掛けて腕を組みながらウトウトとしてるクロムの様子を見て自然に頬が緩むのが分かる。
 取り敢えず、と机の上に散らばってる書類と飲み終わったらしいカップを片付けて毛布を取ってくる。バサッと掛けてやり、ヒンメルはクロムの寝顔をじっと眺め始める。

 ――深く意識した事無かったけど……クロムって意外とと言うかまぁ、顔整ってる方だよね……髪の色も目の色も綺麗だし、結構がっしりした体型だし、何というか……。

「……格好良いよね……」

 ほぅ、と溜息混じりに吐かれた言葉は自分の無意識の内に飛び出ていて。ハッとして両手で口を覆うと僅かにクロムは身じろいだ気がした。
 大丈夫だ、起きてはいない。確認してヒンメルは胸を撫で下ろす。

「………………」

 サッとドアの方に視線を走らせる。人のやってくる気配はない。

「……す、少しだけなら……大丈夫だよね……」

 少し屈んで、クロムの頬に口づけを落とす。ヒンメルはサッと離れるとバタバタと部屋を後にした。バタン!と勢いよく扉が閉められたところで、された側の本人であるクロムが目を開き、口づけされた箇所にそっと触れる。

「……やっておいて恥ずかしがるって何なんだ……」

 クロムは片手で顔を覆う。その隙間から伺い取れる表情は、僅かに頬に朱が差していた。


2013/05/27