固体キャラメリゼ
「アズール、アズールってば!」
「んー? どうしたの?クロエ」
城の廊下を歩いていれば呼び止められ、振り向き様にニコリと笑いながら応対するアズール。これだけ見たら只の美青年だろう。だがクロエは眉を顰め、呆れたように溜息を吐く。何か気に障ることでもしてしまったのだろうかとアズールは脳内で最近の行いを振り返ってみる。
先に話し出したのはクロエだった。
「ねぇアズール。わたしは貴方にとって何?」
突然の問いにアズールは悩み顔を見せる。
「えぇっ? そう、だなぁ……絶望の未来から一緒に戦って来た、心強い仲間……かな?」
「でしょー?」
良かった、返答は間違ってなかったみたいだ。しかしホッとするのも束の間で。クロエの表情はまだ険しい。
「わたしさ、全部が全部ってわけじゃないけど、アズールが誰よりも皆の事を考えてくれてるって知ってるの。本当は泣き虫なのに誰よりも笑顔でいなきゃって頑張るところとか、一生懸命ダンスの練習してオリヴィエさんに近づきたいって頑張ってるところとか、剣術だって人一倍頑張ってるし」
そこで漸くアズールは合点が行く。
「……もしかして、さっき父さんと話してるの聞こえちゃった?」
「……聞くつもりは無かったんだけどね。ごめん」
すまなさそうに眉を下げたクロエに、まさかあの会話が聞こえてたのかと苦笑をしてしまう。
けれどクロエはパッと顔を上げ、
「でもね! 本当にアズールは頑張ってると思うの!だから、その……」
少し口をもごもごさせ、クロエは思い切ったように言った。
「た、たまには本音でぶつかって良いと思うんだ。わたしでも良いし」
「クロエにか……そうか……。ねぇ、ちょっと後ろ向いて?」
「? うん……」
言われた通りアズールに背を向ける。すると両横から手が伸びてきて、クロエを抱きしめた。肩にもこそばゆい感覚がして目だけで確認してみればアズールが頭を預けていて。彼の髪が首筋を擽っている。
「ごめん、少しこうしてて……良いかな」
「……ん」
小さく頷いて、クロエは瞳を閉じた。