天頂フリーウェイ
飛竜の谷の崖近く。そこに愛竜の背を撫でる彼を見つけてクロエは手に持った仮面をブンブン振りながら駆けた。
「おーい、ジェロームーー!」
「……クロエか。何だ」
「これ、有難う。お陰でわたしは『アイク』として戦えた」
差し出したのは顔の上半分を覆う形をした仮面だ。濃い青色のベースに銀の細かい装飾が入っていて、付けなくとも飾っておけば調度品の一つとなりそうな代物だ。
「もう良いのか?」
にこりと満面の笑みを浮かべてクロエは言う。
「ん! もうこれからは『アイク』として父様達の影から未来を改変するんじゃなくて、『クロエ』として堂々と側に立って頑張っていけるからさ」
「そうか……」
仮面を受け取ったジェロームはそれと懐にしまう。と、ジェロームは何を思ったかしまったばかりの仮面を取り出すと腕を伸ばし、クロエの顔に当ててみせる。
「ジェ、ジェローム? どうしたの?」
「ふん。別に、只……私の見立ては間違ってなかったなと思っただけだ。それに……」
今度こそ仮面をしまい、ミネルヴァに向き直りながらジェロームは呟く。
「……お前は仮面をしていない方が良い。当たり前だが其方の方が顔がよく見える」
「え?」
上手く聞こえなかった、が。辛うじて耳に届いた。首筋まで赤く染め上げたジェロームの服を引っ張ってクロエは詰め寄る。
「う、上手く聞こえなかった! ジェロームもう一回!!」
「だ、誰が二度と言うものか!!」
「仮面してない方が可愛いって!?」
「貴様聞こえてただろう!? その上とんでもない聞き間違いをして!」
「上手く聞こえなかったって言ってるじゃん! ほらほらもっかい!」
「クソッ、これ以上付き合っていられるか! 飛べ、ミネルヴァ!!」
バッとミネルヴァの背に乗ったジェロームは颯爽と手綱を操り、空高く飛翔する。
「あっ、ズルい!」
バタバタと暴れる髪を押さえながらの抗議は、きっと君に届いていないだろう。