鉄仮面の竜騎士と支援会話してみた-C
「ジェロームみっけ」
「またお前か……」
ややげんなりとした声色のジェロームとは対照的にカラカラと笑いながらクロエは飛竜の谷の崖っぷちに足を運ぶ。此処は相変わらず強い風が吹き荒れる。羽織ってきたマントなんて押さえてないと飛ばされてしまいそうだ。
「……わたしも、ミネルヴァの背に乗ってみたいなぁ」
「そもそもお前、飛竜に乗ったことが無いだろう」
子供の頃から何かと一緒だが、ジェロームの記憶の中ではいつもクロエは姉のルキナ共々剣を掲げ、兵士達の先頭に立って戦っていた。そういう勇ましい姿しかパッと思い浮かばない。故にクラスも剣士系かロード系だった覚えしかなく、ドラゴンナイト等と言ったクラスとは無縁だったと言えよう。
そう指摘すれば「そうだよ」と非常にあっけらかんとした答えが。
「乗ったこと無いから、乗りたいなぁって。駄目?」
「駄目だ」
「ジェロームのケチ」
ジェロームは眉間に皺を寄せ、低く問うてみる。
「……想像してみろ、クロエ。今までに剣に触れた事の無い素人がいきなり剣を教えてくれと頼み込んできたらお前ならどうする?」
「え? うーん……まず持ち方とか構え方から教えて、徐々に剣術を教える……かな?」
「だろう。そう言う事だ」
漸く合点のいったという顔をするクロエ。だが次の瞬間にはとっておきの悪戯を思い付いた子供のように、にんまりと口の端を釣り上げて笑う。
「竜に乗りたくば接し方とかから学べと、ジェロームはそう言いたい訳だ?」
「……まぁ、そうだな」
「そしてわたし達の中で飛竜使いはジェロームしかいない」
「まぁ…………む?」
嫌な予感しかしない。
「つまり!! ジェロームがわたしに飛竜の乗り方教えてくれるんだね! やりぃ!」
「ちょっと待て! 誰もそんな事一言も言っていないだろう!!」
諸手を挙げて喜ぶクロエはきょとんとした顔を浮かべる。
「えー、だってどう考えてもジェローム適任じゃん」
「はぁ……」
此処で断ると言えばクロエは更に嫌だと返し、結果延々と押し問答が行われる事は火を見るよりも明らかだ。重い溜息を吐きだし、ジェロームは己に辛抱するんだと言い聞かせながら口を開く。もし仮面をしていなかったら目頭を揉んでいた事だろう。
「……ミネルヴァの背に乗せるのは当分後だ。先ずはペガサスから慣れていけ」
クロエはパチパチと目を瞬かせる。
「……わ、本当に?」
「何だ、その驚き様は。やりたくないのなら別に私は――」
「やっ、やるやる!! やらせてください!!」
やったぁ! と喜ぶクロエの傍らで、どうやって教えていくか、やるからには徹底的にしごいて教えていこうと練習プランを脳内で組み立て始めるジェロームだった。