星を流す人
ルフレに頼まれた諜報活動を終えて軍の野営地への帰路を辿っていると既に日は落ち、雲間からは綺麗な星空が覗いている。しかしガイアはそんな景色に目もくれず、己の天幕を目指して移動していた。今から結果を報告しに行ってもとっくにルフレは就寝しているだろう。彼を叩き起すのは忍びない。朝一で報告すれば良いだろうと自己完結し、黙々と歩を進める。
と、野営地までもう直ぐと言うなだらかな丘に差し掛かった時。奇妙な物が転がってるのに気づいた。盗賊の仕事柄、夜目が利く為だ。足音を殺し、近付いて確認してみる。ソレはどうやら人のようだ。と言うか――
「……何やってんだ、ヒンメル」
「うひゃあ!?」
彼女からしてみれば寝転がっている所、突然誰かが覗き込んできたように映っただろう。ビクッと寝転がった体勢のままヒンメルは肩を震わす。ガイアとは反対にあまり夜目が利いていないのか、ややあって「……ガイア?」と恐る恐ると言った体で名を呼ぶ声がした。
「そうだ。俺だぞ」
「はー……ビックリさせないでよ……」
「ははは! 悪かったな。大体、何でこんな時間に出歩いてるんだ?」
「んー? 星見てた」
「星?」
隣に来いと、丘の芝生を叩きながらヒンメルは誘う。早々に切り上げれば良いか、とそれに従ってガイアはゴロリとヒンメルの隣に寝転ぶ。
そして、ガイアは感歎の声を上げた。
「おぉ……すげえな……」
「でしょー?」
寝転ぶと、視界全部が星空に覆われる。使い古された表現かも知れないが、まるで星の海に抱かれたみたいだ。
ヒンメルが人差し指を立てて一つの星を指差す。あれはどんな名前でどんな意味を込められたのか等と説明してくるが、ガイアにはさっぱりだ。寧ろ子守唄のように耳に届き、疲労も相まってガイアの瞼を重くする。
「で……ガイア?」
「……っと、すまん。寝てた」
「あ。ルフレに頼まれて諜報活動だっけ? うわー、ごめん。捕まえちゃって」
「いや、気にするな。お前とこうして寝転がって星を見るのも、悪くはないと思ってるしな」
「うー……そ、そうなら良いんだけど……」
「良い子守唄代わりになるしな」
「それ褒めてないよね? ねぇガイア?」
「さて、さっさと天幕に戻って寝るとするか」
「もー! ガイアってば!!」
笑いながら立ち上がって歩き出したガイアをを追いながら、ヒンメルは彼の背中をポカポカと叩いた。