女嫌いの剣士と支援会話してみた-A
「せやっ!」
目の前で古びた剣を振りかぶっていた屍兵を一刀両断して屠ったヒンメルは内心舌を打つ。
半歩後ずされば崖の端、前方は数多の屍兵、左右には仲間が展開しているものの、そちらに退こうとすればこの数の屍兵を連れて行ってしまう事になる。更に襲ってきた屍兵を切り払ってヒンメルは崖下に視線を落とした。
崖は凡そ五メートル程。崖下は馬車が二台並んで通っても余裕そうな程の幅の道がある。運が良ければ怪我なく降りられそうだが、逆を言えば運が悪ければ大怪我をする可能性だってある。一か八か、賭けながら飛び降りようと覚悟を決めた所で下方で何かが動いた。それと同時に耳に届く声。
「……来い! ヒンメル!」
見なくても誰かなんて声で分かった。
無愛想で素っ気なくて、けれどここぞという時に頼れる彼の声。ヒンメルは構えていた剣を納めると前方の屍兵を見据えたまま地面を蹴った。ふわり、と体が浮いて濁った灰色の空が映り、視界の端に映る崖の先端と屍兵の姿が遠くなっていく。そのまま自由落下に身を任せているとガシッと誰かに抱きとめられた。近くにあるのは見慣れた無愛想な表情で。
「さっすがロンクー、ちゃんと抱き留めてくれるって信じてた!」
「……もう二度とごめんだがな」
直ぐ様ロンクーは抱えていたヒンメルを降ろし、心底嫌そうに吐き捨ててから剣を抜き払う。彼の視線の先には崖から降りてきた屍兵が居て。隣に並んだヒンメルも続いて剣を抜いて構えた。
「目標は前方に展開し始めた屍兵! 目的は突破してクロム達と合流する事!!」
「ああ……一気に蹴散らすぞ!」
「了解!」
同時に地面を蹴り、屍兵の群れへと突っ込んでいった。
2014/03/24