聖王の軍師と支援会話してみた-C
「うーん……此処にアーチャーが居るからペガサスナイトは進められない……かと言って剣士を進めたら……いや、こっち側に回り込んで……?」
うんうんと唸りつつ、いつも軍議が開かれる大きな天幕内で一人椅子に座りながら、机に広げた盤上に目を落とす青年の姿があった。その人はこの軍の全指揮と軍略を一手に担っている人物であり、彼の聖王の相棒とも呼べる存在でもあり。
そんな彼に、声を掛ける人物があった。ひょこんと天幕の入口を捲って顔を覗かせる。
「おーい、ルフレー……って、何々?次の戦いに向けての戦略でも練ってた?」
「ああ、ヒンメル。うん、少し思うところがあってね」
「じゃあ丁度良かったかな。はい、お茶とお菓子」
盤の傍らにヒンメルは持参したお茶の入ったカップと焼き菓子の載った皿を置く。そうしてちらりとルフレが向き合っている石盤の『ソレ』に視線を落とした。
「へえ、小石とか木の枝で仮想の戦場に見立ててるんだね」
石盤の上には小枝や小石があちこちに点在しており、それぞれが自軍、敵軍なのだなと理解する。ルフレは頷くと小枝を一つ掴んで動かす。
「うん。実際の模擬訓練じゃ出来る事は限られてくるからね……ええと、此処のアーチャーをこっちに移動させて、っと……うーん……」
ヒンメルはじっと盤上を見つめ、小石を摘むと動かした。そのままひょいひょいと幾つかの駒を動かしていく。
「……ヒンメル?」
「ルフレは敵がこう攻めて来たらどうする?アーチャーは戦士に囲まれて身動きが取れない、かと言って別の駒を動かそうとすればダークマージの攻撃範囲に入っちゃう」
口元に手を当て、ルフレは考え込む。
「……ペガサスナイトを向かわせて……こう、此処に別のアーチャーを配置する。そして……こうして……こうすれば……」
ちょいちょいと駒を動かし、敵の戦士やアーチャーの駒を横に倒していく。それを見てヒンメルはパチンと手を叩いた。
「お見事! さっすがルフレ」
頬を掻き、ルフレは笑う。
「いや……それにしても、君が軍略に明るいなんて知らなかったよ」
「ああ、だってルフレが来る前は私が軍師みたいな役回りだったし? でもまあ、流石に自警団してた時よりも人数も規模も格段に違うから、今その時みたいにやってみろって言われても自信ないんだけどね」
「……聖王の従者ってなんでも出来るんだね」
「出来る事をしてるだけだって。私だって苦手なのはあるし……」
そうだ、とルフレが手を叩く。
「ヒンメル、もし良かったら僕の軍略を練る時に助言をしてくれないかい?」
「えっ、私が?」
己を指差し、ヒンメルは目を見開く。ルフレは頷き、
「一人で自軍も敵軍も動かしているとどうしても単調になるんだよ。それに僕以外の意見も欲しい。どうかな?」
「ううーん……まあ、手が空いてたらでいいなら構わないよ。私もルフレの力になりたいし」
ヒンメルの快諾に、パッと表情を明るくさせる。
「ありがとう!それじゃあ早速なんだけど――」
「はいはい、どれどれー」
ルフレの隣の席に座り、二人は額を突き合わせながら日が暮れるまでずっと軍略を練り続けた。