パレイドリアの残照

レド

 視界に映る赤が脳裏にこびり付いて離れない。色が無い、停滞した世界の中で鮮烈に色を放つそれは、くしゃりと歪んだ泣き顔と共にジークフリードの心の中に確かに形を作っていた。
 何故こんなにも気になるのだろう。自身に過去なんて無いのに。記憶すら無いのに。あるのは《蒼》のジークフリードとして目覚めてからの出来事と使命だけ、その筈なのに。

「……何故、こんなにも触れてみたいと思うのか」

 グローブに包まれた己の手を見、呟く。広大な《工房》でその声を聞く者は居ない。
 次に相見えれば、分かるだろうか。そんな疑問を持ちながら静かに佇む蒼の騎士人形を見上げた。


2019/05/27

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