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有終の美

 補給で立ち寄った街でたまたま見かけた。理由はそれだけだ。
 小さな鉢植えで見事に咲き誇る白薔薇をエンカクはぼんやりと見つめる。薔薇は育成が難しいが、何度か経験のあるエンカクの手に掛かればご覧の通りだ。光に透けそうな程白く肉厚な花弁を綻ばせ、芳しい香りを部屋に振りまくその薔薇は、誰がどう見ても「美しい」と称するには十分だった。
 マグカップに注いだ珈琲を飲みながら、取り留めのないことを考える。そう言えば、白薔薇の花言葉は確か――。
 思い出したエンカクは小さく笑い、鉢植えを以て部屋を出ていく。
 此処で静かに枯らすより、似合う奴の手元にある方が花も美しくあれるというものだ。

「お前にやる。精々枯らさないようにすることだな」

 私の部屋に訪れるなり手に乗せて押し付けてきたのは、二輪の白薔薇が咲いている小さな鉢植えだった。
 草花に興味は無い。だけど時折こうしてエンカクが持ってきては部屋に置いていくから、私の部屋は割と絶えずに何かしらの緑が置いてあって。
 しげしげと見つめる。綺麗な薔薇だ。

「その花はお前に似ている」

「私に?」

 どう言う事だろう。別に私は髪が白い訳でもないし、己が花のように綺麗だとも思っては居ない。首を捻っていれば面白そうにエンカクは僅かに口角を持ち上げた。

「意味は自分で考えてみるといい」

 用はそれだけだと言うようにエンカクは踵を返していく。
 ……分からない。後で詳しい人に聞いてみようか。


2023/03/21

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