餌付け的行動
「はい、シンクレア。あーん!」
「あ……あーん……」
シンクレアの席の隣に椅子を置き、ピンク色をした貝殻型菓子――トゥンカロンを食べやすい大きさに割ってシンクレアの口元へ運ぶラウィニアの光景は、そろそろ休憩中の車内の見慣れた様子となっていた。
にこにことしながら差し出すラウィニアと、恥ずかしそうにしながらも小さく口を開けてトゥンカロンを齧るシンクレア。その光景を「若者が微笑ましい事をしている」と生暖かい目で見つめる者も居れば「親鳥が雛に餌をあげている」と思う者も居るし、「何やってんだあいつらは」と口に出す者も居た。口に出した者はラウィニアの機嫌を損ねて口論になった末、頭をショットガンで撃たれてダンテの世話になっていたが。
自分の分のトゥンカロンを齧り、さっさと胃に送ったラウィニアは膝に乗せていた紙袋をゴソゴソと漁り、こんがりと焼き上げられたホットサンドを取り出して頬張る。美味しそうに頬張って身悶えする様子はコマーシャルの主演を張れそうな程だ。
……そう言えば、とトゥンカロンをよく噛んで飲み込んだシンクレアが口を開く。
「……ラウィニアさんって、よく食べてますよね」
「んー? そうかな」
《気付くと何か食べてるよね》
コチコチ。バスの前方からダンテの声ならぬ秒針の音が飛んで来た。咀嚼しながらラウィニアは傾げた首を反対側に傾ける。
「戦闘するとお腹空かない? それに美味しい物食べるのって好きなんだ」
確かに運動をすればエネルギーを消費する。故に食べて補う……と言うのは分かるのだが、それにしては頻度が常人と比べて多いような気がする。比較的細身なラウィニアの体の何処に収まっていくのか不思議な位だ。
「このホットサンド買ったお店とか私のオススメだよ! 今度一緒に買いに行こうね! 本当は23区のお店とか案内したいんだけど……」
「ええと、23区……?」
濁すラウィニアにシンクレアは曖昧に笑って見せる。そんな様子を眺めていたグレゴールがボソリと一言。
「……なぁ、23区って食人通り……」
「グレッグ、しーっ」
咄嗟にロージャがグレゴールの口を手で塞いだ。