Tempo di caccia
《粛清》が始まる。夜に沈む裏路地に、その者たちは居た。
真紅のコートをなびかせながら、ミアはガンブレードに推進弾を始めとした弾丸を装填していく。その作業を終えると、肩越しに振り返って影のように付き従っている少年へ声を掛けた。
「さあ、ルチオ。準備は良いかしら」
「問題ありません。いつでもご命令を、アンダーボス」
淡々と応えながら、ルチオは腰に下げている蛇腹剣の感触を鞘の上から確かめる。
ミアの下に付いてからの初仕事だ。失敗は許されない。ミスだって犯せない。そういった緊張のせいか、鞘に触れる指先が些か冷たくなっているように思えた。
ミアがじ、とルチオの顔を見つめる。取り繕ったつもりだが、もしかして緊張しているのがバレてしまったのだろうか。
気持ちを隠すように後ろ手を組む。目線を落としていれば柔らかな声音で名を呼ばれ、反射的にルチオは顔を上げてしまった。視線の先にはルチオと向き直ったミアが居る。
「貴方ってば、緊張しているでしょう」
するりとミアの両腕が持ち上げられ、ルチオの頬を優しく包む。かと思えばむにむにと遊ぶように捏ねられ、困惑のままにルチオはミアの名を口にした。
「あの……ミ、ミアさん?」
むにむにと頬を摘まれる。
「も~っ、そんなに肩肘を張らなくて良いのに。今日はそこまで強くもないカルテルとファミリーが相手よ? 貴方は教わった通りの動きをすれば良いだけ。私だって居るのだもの」
「ね?」と微笑みながら小首を傾げられ、その動きと笑顔の可愛さにルチオは心臓がギュンと軋んだ気がした。わざとやっているのだろうか。
一通り捏ねて満足したらしいミアが手を下ろす。気を取り直すようにルチオも一つ咳払いをし、気持ちを切り替えた。
「貴方のお背中は僕がお守りします」
「あら、頼もしい。宜しく頼むわね、私の可愛いソルダートさん?」
ミアがガンブレードを構える。それはさながら開戦の狼煙である。ルチオも柄に手を掛け、ミアの後を続いた。
さあ、狩りの時間だ。