隣に違和感、視界に不具合
――ふと、意識が浮上する。どうやらミアの帰りを待っている内に眠りに付いてしまったらしい。目を開ければ、ルチオは眠りについた時と同じようにミアの執務室のソファに腰掛けていた。窓から差し込む陽は既に落ち、黒々とした光が差し込んでいる。
起きなければ、とルチオがソファの背もたれから背を起こそうとする。そして違和感を抱いた。
右肩が何やら重たい。ずしりと何かが伸し掛かっている。丁度頭一つ分くらいのものが。
目線を右下へ落とす。柔らかな金色が目に留まり、ルチオは一瞬心臓がひっくり返ったかのような心地になった。
――ミアさんが僕に寄り掛かって眠っている……!?
異常事態に頭が追い付かない。何故ミアが自分の隣で眠っているのか。何時帰った来たのか。何故起こしてくれなかったのか。何故自分の肩に頭を預けているのか。
混乱していると、ミアが小さく呻いた。ルチオはハッと息を呑む。
「……ミアさん?」
「ルチオ……?」
薄く目を開けたミアが頭を起こし、ルチオの顔を見上げた。
「申し訳ありません、起こしてしまいましたか?」
「うぅん……」
まだ頭が働いてないのか、ミアの反応は鈍い。眠くてぽやぽやとしているミアは幾分か幼く見え、可愛らしいななんて思っていると、ミアは再びルチオの肩に頭を預けた。
……ええと、これは。ルチオが戸惑う。
「……もう夜になってしまいますよ」
「もう少しだけ……」
「こんな所で眠られては、お風邪を召されてしまいます」
左腕を何とか伸ばし、ミアの肩に触れると軽く揺すってみせる。しかしミアが夢の世界から帰ってくる気配は見せない。
「あと五分だけだから……」
「……では、五分後に起こしますね」
この状況にあと五分だけ耐えれば良い。天国のようでありながら、じりじりと焼かれるように理性を試されるこの時間を。
ミアがすり、とルチオの肩に頭を擦り寄せる。
「……ふふ。ルチオ、暖かい……」
「……」
あと、五分。
この責苦に耐えられるだろうか。