事実より奇なり
インキュベーション・パーティーの会場がにわかにざわめき立つ。
それもその筈だ。生産の禁止されたGUND-ARMが実は極秘裏に開発されてアスティカシアで目立っているだとか、それの解体について話していれば総裁の娘であるミオリネ・レンブランが突如《株式会社ガンダム》を設立してGUND-ARM――エアリアルとその搭乗者であるスレッタ・マーキュリーを庇い、デリング・レンブランがそれに投資をしただとか。
一連の様子をパーティー会場の壁際で眺めながら、リーセリットは腕を組む。ややあって壇上から一人の少年が降りてきて、リーセリットはフンと鼻を鳴らした。
「下手くそ」
足を止めたエランがリーセリットへ視線を向ける。
「エランはあんな風に笑わないし、あんな反応しない。それに――」
「なあ、」
遮るように。うんざりした様子でネクタイを緩めながらエランがリーセリットを睨む。
「お前にとって『エラン』は誰だ? 俺か? あの代用品か?」
「代用品なんて言わないで。あんたなんて……」
「奇遇だな。そこは俺も同意見だ」
最後の言葉は聞かずとも分かる。エランが背を見せて歩き始めれば、背中に向かって悪態を付かれた気がした。
――あんたなんて、大っ嫌い。
2022/12/07