Happybirthday to

「ねえ、エランの誕生日っていつ?」

 エランのベッドを占領し、ごろごろと携帯端末を弄っていたリーセリットが問い掛けた。
 この婚約者はいつも突飛な言動をするが、もう慣れたものだ。傍らに椅子を持ってきて読書に耽っていたエランは、特に本から顔を上げる様子もなく答える。

「君なら知っているだろう?」

「え? えー……それってあいつのじゃん! 私は『エラン』のが知りたいの!」

「無いよ、そんなの」

 じゃあさ、とリーセリットは思案する。

「あいつの誕生日……じゃないし、初めて会った日……でもないでしょ。んーと……」

 馬鹿らしい、と思いながらエランはページを捲る。そんな物、自分にとって無意味でしかないのに。

「じゃあ、私の誕生日にしよ! これなら忘れないし!」

 「名案だ!」とリーセリットはベッドの上で転がる。
 全て知っている上で無邪気に喜ぶ彼女が、たまにどうしようもなく妬ましくなる。なんの気なしに呟かれる未来に苛立ちを覚える。

「次の誕生日、エランに沢山プレゼント贈るから覚えといてよね!」

「さあ。君が覚えていられるか分からないけどね」

「ふーんだ。覚えてられるもん。エランは何が欲しいか今から考えておくんだよ!」

 ただ、何も考えずに未来図を語るこの時間は、不思議と悪い気分がしないのだ。


2022/12/12